権利の窓
2009年11月24日 民法入門48 「「見えないもの」を信じられますか?」
占有権総説 意義・種類・態様 ―民法入門48―
「「見えないもの」を信じられますか?」
皆さんこんにちは。
今回は、物権の中でも一風変わった権利である、「占有権」についてお話したいと思います。
たとえばみなさん、「所有権」という概念がなくなったら、非常に困る事は簡単に想像がつくと思いますが、「占有権」についてはいかがですか?すぐにイメージできない方が多い事だろうと思います。
この違いは、難しくいいますと、「占有権」はいわゆる「本権」ではないという事実に由来しています。「本権」とは、所有権や賃借権などの、占有をマットウなものにする権利の事をいいます。
つまり、「占有権」と、「所有権」は、別の権利であるという事です。そして、この、別の権利であるという認識は、占有制度を理解する上で特に欠かせないものですので、まずその点の理解をお願いします。
そもそも占有とは、「自己のためにする意思をもって、物を所有すること」をいい、また、その事により、人は「占有権」を取得します。その物について、所有権があろうが無かろうが、です。
したがって、民法は、わざわざ占有制度を置いてまで、現実に人が物を支配しているという状態を、重要視していると言えます。
ちなみに制度上、泥棒にも占有は認められることになりますし、逆に所有者や賃借人・質権者であっても占有を失う事だってあります。
と、ここまでの説明でも、占有制度についてはまだよく分からないですよね。では、具体的に占有制度が社会のどういう場面で必要となる可能性があるのか、見ていきましょう。
たとえば、あなたが持っているそのカメラ、間違いなくあなたの所有物であると証明するためにはどういう方法がありますか?少し考えてみてください。
・・・おそらく、方法はないはずです。
あなたが言えることは、自分のカバンに持っていたから私のものに決まってる、という事くらいでしょう。しかしそれだけでは、人から借りたものである可能性だってあります。自分が所有者であるという事の証明は、実はかなり難しいのです。
すると、困ったことが起こります。もしあなたがそのカメラを盗まれても、自分に所有権があることを主張するしか手が有りません。
しかし、既述のとおり、所有権の証明はカンタンにはいきません。所有権は目に見えませんから・・。
またそれとは逆に、所有権の証明が難しいという事は、相手方が所有者であることを確認することも難しいという事になります。あなたがパソコンを買った相手は、実は無権利者だったかもしれないのです。
そこで民法は、「占有」という見かけだけの状態であっても、その事実を保護し、また一定の効力を与えることによって、上記の不都合を解消しているのです。詳細は後日に譲りたいと思いますが、立法者が日常の本当に細かいことまで配慮していることが徐々にお分かりいただけると思います。
発生する法的効果については、統一した根拠はないとされているくらい、その影響が多岐にわたる占有制度ですが、次回以降少しでも「見えないものを分かり易くする」お手伝いができましたら幸いです。
(作成者 前川 量平)