権利の窓
2008年08月19日 民法入門44 「物権変動の対抗要件」
物権変動の対抗要件 ―民法入門44―
「物権変動の対抗要件」
みなさん、こんにちは。北京オリンピックが開幕し、スポーツ三昧の日々をお過ごしではないでしょうか。
選手のオリンピックに懸ける想い、4年間の努力が伝わってきますね。何事も、努力し続けることの大切を改めて感じさせられますね。
さて、今回は物権変動の対抗要件についてお話したいと思います。
1.なぜ物権変動に対抗要件が必要?
例えば、AさんがBさんの建物を買いたい場合、Bさんとの口約束でも、所有者が自分(A)になることは、前号まで説明でお分かりになるかと思います。しかし、AさんとBさんの契約を全く知らないCさんが、この建物をBさんから買ったと意思表示をした場合、二重譲渡の問題が起こります。
そうならないための備えがあれば、自分が所有者だと主張できますよね!
2.不動産物権変動の対抗要件について
不動産の物権変動の代表例は土地・建物の売買です。売買契約がなされると、それだけでその土地・建物の所有権は、買主に移転します。しかし、契約は意思表示をするだけで成立するため、上記のような二重譲渡が生じることもあります。このような場合、AさんとCさんのどちらが建物の所有者になるのでしょうか?1つの物に対して、同じ内容の物権は成立しないので、AさんCさん両方を所有者であるとすることはできません。
そのため、民法では、第三者相互間(AさんからみればCさんが、CさんからみればAさんが第三者)では、Bさんから「移転の登記」を受けなければ、自分が所有者であるという主張(対抗)することができないとされています。
つまり、登記には対抗力がありますので、もし、Aさんが先に移転登記を受けていたときは、Aさんの所有権取得が確定的になり、Cさんは所有権を取得しなかったことになります。
このように、民法では先に登記を備えたものが優先するとしていますが、例外もあります。
例えば、背信的悪意者(人を騙そうとしている人)や、詐欺又は脅迫によって登記申請を妨げた第三者、不法行為者、不法占拠者、無権利者などに対しては、登記なくして対抗できるとしています。
3.動産物権変動の対抗要件について
動産の物権変動に関しては、「登記」という制度はありません。
そこで、民法では、動産の物権変動の場合は、登記ではなく、「引渡し」の前後によって優劣を決めることになっています。例えば、バーゲンは早者勝ちですよね!
引渡しとは、占有の移転のことをいいます。
この引渡しには、単に現実に物を引き渡す場合(現実の引渡し)だけでなく、簡易の引渡し、占有改定、指図による占有移転も含まれます。
「簡易の引渡し」とは、物自体はすで移転しており、当事者の意思表示だけで、占有している状態(占有事実)が賃借人であった譲受人に譲渡される場合をいいます。
「占有改定」とは、物自体は移転せず、譲渡人が譲渡する旨の意思表示をするとともに、引き続き占有を継続する場合をいいます。
「指図による占有移転」とは、物自体は移転せず、所有者の代理で占有している者に対して、以後第三者のために占有するように命じ、第三者が承諾する場合をいいます。
4.終わりに
このように、物権変動を第三者に主張(対抗)するためには、対抗要件を備える必要があります。
不動産には、「登記」
動産には、「引渡し」
が必要であると、理解していただければと思います。
(作成者 興山 幸治)