権利の窓
2006年12月05日 民法入門27 「代理人じゃないの?」
代理 無権代理 ―民法入門27―
「代理人じゃないの?」
代理の話が続いていますが、今回は無権代理についてお話しをさせて頂きます。
『無権』という言葉はイメージが掴み易いと思います。『権利が無い』という言葉そのままで、代理人による代理行為がなされたのに、代理人に代理権がない場合を無権代理と言います。
ただし、顕名をしなくては無権代理とはいわれません(以前にお話しをいていますが、代理人が代理人としての意思表示であると明らかにすることを顕名といいます。例えば、A代理人Bと書くことです)。権限がなく、顕名をしないで、他人の物を売買することは他人物売買という別の行為になります。
余談ですが、他人の物を売買するとはとんでもない事だと思われるかもしれませんが、他人物売買は債権の契約として有効です。
無権代理は、『権利が無い』のですから、原則として本人に効果が帰属しません。本人に効果が帰属しないという事は、相手方は損害を被ります。
例えば、代理人による土地の売買で、自分の物になったと思っていた土地が、自分の物になっていなかった時など困ります。
このままにしておくと、代理制度の信頼に関わってきてしまいます。ですので、民法は無権代理人に責任を負わせるなどの制度を設けています。
どのようなことが出来るのか、みていきましょう。
本人は追認と追認拒絶をする事が出来ます。
追認とは、本人が無権代理行為を引き受けることで、追認拒絶とは、無権代理行為を拒絶することです。
無権代理行為は本人が追認をすると、無権代理人が契約をしたときに戻って、有効な代理の行為になります。また、本人が追認拒絶をすると無効な行為になります。
ですので、無権代理行為というのは絶対的に無効な行為ではありません。本人が自分に得になる契約だからと有効にすることが出来るのです。
無権代理人がした契約は有効となるか、無効となるか、決まっていない状態におかれていることになります。
相手方は催告と取消をする事が出来ます。
催告とは、本人に対して期限を定めて、追認をするのか追認拒絶をするのか、決めてくださいと、いう事です。
取消とは、無権代理行為を撤回し、無効にすることです。
前述したように、無権代理行為は不安定な状態におかれています。このままだと、相手方はいつ本人が追認をするのか、追認拒絶をするのかが分かりません。
ですので、相手方は催告か取消をすると、自分でイニシアティブがとることが出来ます。
代理権が存在せず、追認もされない時、相手方は無権代理人に特別の責任を追及できます。
民法は規定を置いて(117条)無権代理人の特別の責任を定めています。
責任の内容は、履行か損害の賠償です。
損害の賠償は履行があったのと同一の利益の賠償です。
例えば、相手方が本人から土地を買って、その土地をすぐに転売して、利益を得ようとしていた場合、その転売利益まで賠償をすることになります。
(作成者 岡本 美恵)