権利の窓
2006年03月14日 民法入門11 「「物」と言っても・・・」
物 定義・不動産及び動産 ―民法入門11―
「「物」と言っても・・・」
今回のお話しは「物」についてです。
まず、六法を見てみましょう。民法第85条が「物とは何か」を定めています。これによると、「この法律において「物」とは有体物をいう。」とあります。
う~ん…さっぱりわからないですね。じゃあ「有体物」って何でしょう?法学上「有体物」とは、一般に「液体・気体・固体」であると説明されます。何だか理科の授業みたいですが、皆さんが今見ておられるパソコンのディスプレイや机はもちろん「物」ですし、土地や建物も法律上は「物」の仲間に含まれます。(この点については、後程ご説明します。)
そして、これらの「物」のなかで、一定の条件を満たせば、その「物」は所有権の対象となります。つまり、先程のディスプレイや机については皆さんやお勤め先の会社が所有権を持っているのは、これらが「物」であり、以下の条件を満たしているからです。では、その条件について見ていきましょう。
(条件その1)支配できること
例えば、大気中の空気は支配することができないので、「物」には当たらないのです。
(条件その2)独立性があること
つまり、「物」の一部ではないことが条件となります。(ただし、土地の一部については、「物」の一部に当たっても例外的に認められます。この点については後述します。)
(条件その3)特定できること
例えば、ビール1ダースが「物」として所有権の対象となるためには、どの1ダースかを決めなければならないわけです。
このように、法律上所有権の対象となる「物」というのは、とってもややこしくて面倒そうなのですが、今後の権利の窓でお届けする「物権法」の分野を通じて考えて頂ければ、理解して頂きやすいと思います。
次に、「物」の分類について、お話しします。
「物」は、大きく分けると、不動産と動産に分類できます。
民法でいう「不動産」とは、「土地」と「土地の定着物」を指します。先程お話しした通り、土地の一部については、例外的に所有権の対象となりますから、売買の対象として取引できますし、一定の条件を満たせば時効によって取得することもできます。
「土地の定着物」というのは、その土地に継続して付着していて、物理的・社会的に分離しにくいものをいいます。
例えば、建物や取り外しが困難な庭石などが挙げられますが、建物は土地とは別の不動産として、庭石の場合は土地の一部の不動産として取り扱われます。
「動産」について、民法は不動産以外の物はすべて動産である!ときっぱりと(?)分けてます。つまり、民法上「物」は動産か不動産のいずれかに属することになります。また、
無記名債権(商品券や乗車券)も動産とみなすと規定されています。
「動産」と「不動産」の区別は、単に「それが何か?」という分類だけでなく、今後登場してくる民法のお話しの中で取り扱いが変わってきます。
例えば、不動産の所有権を他人に主張するには、登記が決め手になりますが、動産の場合は引渡しを受けていることが決め手になります。(詳しくは物権法のなかでお話しします。)
以上のように、世間一般では「物」は「物」でしかなく、深く考えることは少ないのですが、民法を学ぶうえでは、細かく考える必要があります。あんまり、考えすぎても何か「哲学」みたいなんですが、このような微妙な解釈の差で裁判になっていたりするのが実情です。最初はわかりにくいかもしれませんが、物権法を勉強していくと、意外とすんなり理解できると思います。
(作成者 波止 哲)