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2014年10月05日 株主と名乗る者が突然現れたら
1.総説
突然、Xと名乗る人物が会社(株券不発行会社であり、非公開会社)に対して、株主であるYから株式を取得したから、株主名簿の名義をY名義からX名義に書き換えて欲しいという、株主名簿名義書換請求をして来ました。
会社としては、Yは確かに株主名簿記載の株主ではあるものの、Xという人物については、全く心当たりはなく、親族でもありません。こういった場合、Xからの株主名簿の名義書換請求に応じなければならないのでしょうか。
2.まずは、XがYから株式を購入した経緯を確認してください。
会社としての対応として、まずは、Yから売買によって取得したのか、それとも、Yが借金をし、借金の返済に代えて取得したのか、それとも、XはYの子供であり、Yより相続により取得したのか、Yの取得の経緯により、会社としての対応が変わりますので、取得の経緯をよく確認する必要があります。
3.売買・代物弁済で取得した株式である場合
Yにも株式譲渡の経緯を確認したところ、どうやらXはYから株式を売買により取得した者のようです。Xとしてもただ単に株式を売買により取得しただけでは、会社に対しても第三者に対しても、株主であることを主張できませんから、株主名簿の名義書換が必要となります。
会社は正当な理由なくXの株主名簿名義書換請求を拒否できませんから、会社としてはXY間の株式譲渡を承認するかどうかを決定することになります。
Xを調査した末、会社としてXは株主としてふさわしくないと判断した場合、今回の譲渡を拒否することも考えられます。
この場合、会社としては、①自らXの保有する株式を買い取る。②会社が株主としてふさわしい買主を見つけてくる。このいずれかを選択することになります。
ここで一つご注意してほしいのは、Xからの請求をほっておくことはやめてください。一定期間経過するとXY間の譲渡を会社が承認したものとみなされます。
4.相続により取得した株式である場合
XがYの相続人であり、遺産分割協議によりYが持つ株式を相続した相続人である場合、会社のとるべき対応は変わってまいります。
相続等による株式の移転に関しては、会社として当該株式の譲渡承認手続きは不要です。しかし会社としては、Xに株式を持ってもらいたくない場合が考えられます。この場合は、定款で定めることが必要となりますが、相続人であるXに対して株式を売り渡すよう会社は請求することができます。
5 おわりに
株式譲渡に関して、非常に簡単ながら今回お話しさせて頂きました。
この他、大きく問題になる点としては、上記手続にあたって、株式の価格はどのように決まるのか、価格について、当事者間で協議が整わない場合はどうするのか、会社に資金が無くても構わず買取れるのか、譲渡を拒否された株式譲渡契約は無効になのかどうかなど、いろいろと問題はあります。機会を改めてお話しさせて頂けたらと思います。
ただ、M&A、事業承継にあたり、良く利用される手続でありますし、何方が株主なのかということは、会社経営に携わる社長様をはじめ、経営陣の皆様方にとりましては大きな関心事かと思いますので、意識しておいて頂きたい会社法上のお手続きの一つになります。