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2014年01月21日 相続でよくある問題 『株主の相続』
株主の相続
この度、永らく更新が滞っておりました権利の窓を再開いたします。
今後の権利の窓は、民法に限らず、皆様へのお役立ち情報を中心に公開して参ります。今後も権利の窓を宜しくお願い申し上げます。
第一回目の今回は、最近、周囲の方からもよく質問頂いております『株主の相続』です。
株主が亡くなった時に起こりやすい問題
株主が死亡し相続が発生した場合、遺言書・遺産分割協議を経るまでは、株式は法定相続人間で共有することとなります。
共有中の株式については、たとえば株式100株を保有する株主について相続が発生し、その相続人が子2名であった場合、当該2名の相続人が株式を50株ずつ当然に保有するのではなく、2名の相続人が、100株の株式に対して、2分の1ずつ権利を保有している状態となります。
故に相続人の1名が株式を1株売りたくても、他の1名の相続人の同意を得ない限りは、たった1株の株式であっても、株式を譲渡することもできないことになりますし、株主総会において、議決権を行使することもできません。
冒頭で申し上げたとおり、遺言による場合や遺産分割協議が成立しない限りは、相続した株式を自由に処分することはできないことになります。
ここでは、株式を相続する際、よくある問題とそのポイントをご説明いたします。
① 議決権の行使について
株式について、相続が発生した場合、会社法は第106条にて、株式が2名以上の共有に属した場合の議決権の行使方法について定めております。
この場合、会社からしますと、株主の相続人が複数名おりますので、どの相続人から議決権が行使されるのかわかりません。
そこで株主の相続人間で、相続分の過半数の同意をもって、株主総会等において会社に対して議決権を行使する者1名を定めて、会社に対してその者の氏名又は名称を通知することにより、以後その議決権を行使する者として定められた者が、株主総会等において議決権を行使することになります。
② 株式の名義書換について
株式の相続が発生した場合、相続人に株式が相続されますが、このような株式の所有者の変更に関しては、株式の譲渡に関して会社の承認を必要とする、いわゆる株式譲渡制限の規定を定めた会社であったとしても、当該規定は株式の相続には及びません。
相続人は、会社の承認を得ることなく、株式を相続したことを会社に主張していくことができます。
株式の名義書換についても本来は、株式の譲渡人と譲受人が共同して名義書換するよう会社に請求するべきところ、相続の場合は、戸籍謄本・遺産分割協議書等、株式を相続したことを証する資料を会社に提出することで、単独で名義書換を請求することが可能となります。
③ 株式の売渡請求について
上記①で申し上げたとおり、相続による株式の承継については、会社の定める株式譲渡制限の規定の効力が及びません。
そのため、会社にとって好ましくない者が株主となる、または株式の所在が分散してしまうというリスクをはらんでおります。
そこで、会社としては、株主の相続に備えて、定款で相続が株主に発生した場合に、当該相続人から株式を買い取れるよう定めることで、株式が分散することを防止することができます。
今後、株主様の相続問題は各企業様の懸念事項になってこられるかと思いますが、上記のような対策を早めに取られる事が問題解決のカギとなります。
また、今後は当法人でも多く取り扱っている、事業継承についての対策も順次公開してまいります。