権利の窓
2021年04月22日 「新興企業が新株予約権」 日経の記事を読んで
ストック・オプションの話かと思いましたら、そうではなく、
また、上場企業が定期的に新株予約権の行使を受けて、段階
的にご資金を調達する話かと思いましたら、そうでもありま
せん。
スタートアップと呼ばれる創業間もない企業が資金調達の
手段として新株予約権を利用し始めているという記事です。
この記事に記載されているような登記案件は、弊所のほう
でも昨年よりその取扱いは増えてまいりまして、発行と行
使の登記手続きを何度かお手伝いさせていただきました。
お客様の中には、およそ4年ほど前から、日経の記事に記
載されているスキームとは少し違いますが、新株予約権付
社債の形で実行されている会社様もございました。
創業間もない会社様ほどこういった新しい仕組みを早く理
解し資金調達の手段として我がものとしてすぐに利用され
るところにたくましさを感じずにはおれません。
それでは記事にある資金調達手段とはどのようなものかと
いえば、有償にて新株予約権を発行いたします。
なお、新株予約権とは株式を引き受ける権利を言います。
投資家の方は、発行会社よりこの新株予約権を引き受ける
対価というかたちで対象企業に投資を実行します。
これにより発行会社は投資家より投資頂いた資金をすぐ
に使用できます。
ただ、この段階では、投資家の方は新株予約権の行使に
より何株株式をもらうことができるのか決まっておりま
せん。
ただ新株予約権を持っているにとどまります。
一見すると不利な条件のように見えますが、この新株
予約権は、たとえば、1億円以上の資金調達ができたら、
その時の増資の1株当たりの払込金額から2割引きした
金額を行使価額とする新株予約権の行使を認めるという
ようなことが内容とされております。
これにより、増資を引き受けた投資家よりも、先行して
新株予約権をもって投資をした投資家は新株予約権を行
使することで、増資を引き受けた投資家よりも2割引き
の金額で同じ株式を引き受けることができます。
発行会社としては、株価算定を後回しにして素早く資金
を調達できますし、新株予約権による資金調達のため、
利息や返済義務もありません。
さらに負債ではありませんので、規模の小さいスタート
アップとしては債務超過の懸念もなくなります。
かたや投資家としては、少量の書面の取り交わしで投資
を実行できるものの、投資の実行後、はたして当該発行
会社が条件に適った資金調達ができる企業なのか否か、
先を見通す厳しい投資判断が必要となってくるようです。
創業間もない企業であるため、リスクはそれなりに高い
といったところでしょうか。
このような手法はもともとはアメリカにおいて発達した
もので、当地においてはConvertible Equity呼ばれてい
るようです。日本においては有償新株予約権の発行とい
う形で行われ、日本でもCoral Capital
というベンチャーキャピタルが投資契約書等をHP上
で公開しております。
ご興味のある方是非、当該会社のHPを訪ねてみてはい
かがでしょうか。