権利の窓
2017年10月11日 投資契約書と株主間契約書
ここ最近、増資、株式譲渡、役員変更等の登記手続きのお手伝いをさせ
て頂く過程において、今回タイトルとして掲げさせて頂いた、投資契約書
または株主間契約書に関するお話が出てくる機会が多くなってきました
ものですから、このお話をさせて頂きたいと思います。
たとえば、増資をする際もまず当該お手続きに入る前に、前記契約を根
拠に、増資の対象となる株式と同じ種類の株主様の了承を取れたうえでお
手続きを進めていくことになりますので、お手続きとしては、会社法の手
続きだけをすればよいというわけにはいきません。
特に、株式の上場を目指して各ラウンドにおいて資金調達をされる、ベ
ンチャー企業様におかれましては、必ずと言ってよいほど、投資契約書及
び株主間契約書をご締結される機会があろうかと思います。
それでは各契約は何のために結ばれるのでしょうか。
投資契約書とは
投資契約とは、投資家との間で締結する投資に関する条件を定めた契約
をいいます。それでは何のためにこのような投資契約をするのかといいま
すと、投資家がベンチャー企業に対して投資をする場合、当然のことなが
らベンチャー企業は資産を保有していないケースが多いものですから銀
行による融資とは異なりまして、債務不履行の場合に備えて担保を取るこ
とは致しません。このことから投資家による投資といった行為はリスクの
高い行為といえます。
そのため、このリスクを少しでも緩和するために、会社法では定めてい
ない細かな約定を、投資家は会社及び創業者を相手方として投資契約書上
で定めることになります。
投資契約書上で締結する主な内容としては
①、募集される株式の内容・株式の数
②、投資のための前提条件
③、ベンチャー企業の経営に関すること
④、株式の譲渡をはじめとする処分に関すること
⑤、投資を撤退する時のこと
以上のような内容を投資契約の際締結することになります。
株主間契約書とは
株主間契約とは株主間で締結する契約となります。このような契約を締
結するのは、たとえば、創業者間で経営に対する考え方の相違により、株
主が株式を売却したいと考えた場合、経営に対する考え方が異なる第三者
に株式が売却されてしまうと会社の経営がこれを機会にストップしてし
まう事態にならないとも限りません。また、前記、投資契約は投資家と会
社との間を当事者とします。役員の選任に関する条項を盛り込んでも、役
員の選任は株主総会で行いますので、それでは足りず、株主間で経営に関
することとして合意を得ておく必要があります。そこでこれらの場合に備
えまして、株主間契約を締結しておくことが考えられます。
株主間契約書上で締結する主な内容としては
①、株式の処分に関すること
②、ベンチャー企業の経営に関すること
③、保有する株式の比率に関すること
以上のような内容を株主間契約の際締結することになります。内容的に
は、類似する条項もありますものですから、投資契約書と株主間契約書が
一体となったものも時折みられますが、契約を締結する当事者が異なりま
すものですから、2つの契約に分けるケースが多いようにお見受けいたし
ます。
おわりに
今回は両契約の細かな点については触れていませんが、契約書の主な内
容からしましても、増資・株式譲渡・役員変更の際は意識して確認してお
く必要があるものと考えられます。
また、上記の点については、種類株式の内容として設計することができ
る条項もありますので、これを契約の内容とすべきかそれとも種類株式の
内容として設計しておくべきか、資金調達の前提として検討を重ねるべき
内容と言えそうです。