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2014年06月17日 会社法が定める情報開示制度

1 総説

 株式会社の株主が、会社内部の情報を入手する方法としては、以下の方法があります。

① 業務及び財産の状況に関する検査役選任申立て(会358条)

② 裁判所の許可を得ての取締役会議事録閲覧謄写請求(会371条)

③ 会計帳簿等閲覧謄写請求(会433条)

④ 計算書類等の閲覧・謄本または正本の交付等請求(会442条)

⑤ 株主名簿閲覧謄写請求(会125条)

⑥ 定款の閲覧・謄本または抄本の交付等請求(会31条)

⑦ 株主総会議事録閲覧謄写請求(会318条)

株主は、上記に挙げた情報入手方法を用いて、たとえば、取締役会議事録を閲覧して、取締役がはたして、会社法が求める監督義務を尽くしたのか、取締役としての責任を追及すべきか、経営陣を攻撃する材料を調べたり、株主総会議事録を閲覧して、自身が総会中に発言した質疑が議事録に反映されているかどうかを確認することができます。

オーナー社長様初め、経営陣の方々としては、上記を見ただけでも、株主が会社に係る資料をほとんど見ることが可能なので、株主の権利の大きさがご理解いただけるのではないかと思います。

以下では、上記いずれかの権利行使をしてきた株主が今後とりうる行動について簡単にご説明をしたいと思います。 

2計算書類等の閲覧・謄本または正本の交付等請求、会計帳簿等閲覧謄写請求

会社は定時株主総会の2週間前(非取締役会設置会社では1週間前)より各事業年度に係る計算書類および事業報告ならびにこれらの附属明細書を本店では5年間、支店ではその写しを3年間備置いておくことが義務付けられております。

すなわち、会社の事業報告を見ることによって、例えばこれまでの資金調達の状況、従業員の推移等、今後会社が取り組みべき課題を確認することができ、計算書類については過去5年間の推移を確認することができます。さらに、一定の持株を保有する株主においては、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写が可能となります。これにより、計算書類およびその附属明細書の作成の基礎となる仕訳帳、総勘定元帳等の帳簿類を閲覧することが可能となります。

閲覧権を行使することで株主は会社の数年間の業績を知ることができ、たとえば、配当を求める株主が、会社が今年度配当金を出せそうなのかどうか、株式の買取請求を考えている株主が、自身の保有する株式の価値がどれほどのものなのか、どういった評価方法で株式を評価すれば、買取交渉に当たり会社に対し有利に進められるのか、ある程度把握をしておくことが可能となります。 

3 株主名簿閲覧謄写請求

会社としては株主名簿を作成し、これに所要の事項を記載しておく必要があります。もしこの義務に違反した場合、過料を取られる可能性があります。

会社は、株主名簿を本店に備え置くことが義務付けられております。

株主は、株主名簿閲覧謄写請求を用いて、株主名簿を確認して株主構成を確認し、株式の買い集めを検討したり、それができない場合でも、他の株主と画策して、現在の経営陣を攻撃することを検討することができるようになります。

支配権争奪を目的とし、上場会社でよく聞かれる委任状合戦などが現実に起こる可能性もなくはありません。 

4 オーナーとして求められる対策

以上のようなことが起こらないのが一番であり、オーナーが経営の指揮を執る間は、オーナーに株式を一点集中させておくことが一番良いのでありますが、そうもいかない場合には、会社の業績を見計らった株式の買い集め、会社の機関構成に応じた、株式譲渡承認機関の設定、相続が発生した場合に備えての株式の買取請求規定の新設など、株式の分散化防止に向けた定款規定の見直しが必要となってまいります。