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権利の窓

2008年06月06日 民法入門42 「物権変動とは」

物権変動総説 意味・態様・原因・時期 ―民法入門42―
「物権変動とは」

みなさん、こんにちは。
今回も「物権」について書かせて頂きます。
内容は、「物権変動」のご説明です。
「物権」については、数回にわたって書かせて頂いてますが、解りやすく、簡単に、イメージが湧きやすくなるようご説明できればいいのですが、独特の用語があるので、まだ難解な印象をお持ちかもしれませんね。
それでは、早速本文に入っていきます。

1.物権変動総説

物権の変動とは、物権が契約その他の原因によって、「発生」・「変更」・「消滅」することをいいます。
建物の所有権を例えに、

一、物権の発生・・・家を新築することによって所有権が発生
一、物権の変更・・・上階を増築することによって所有権の内容が変更
一、物権の消滅・・・家が地震等で崩壊すれば所有権が消滅

これら物権変動は、その発生原因に応じてさらに大きく二つに分けることができます。

一、「法律行為に基づく物権変動」
契約(売買が最も分かりやすい)、単独行為(遺言・物権の放棄等)など

一、「法律行為に基づかない物権変動」
時効(代表的なものですね)、遺失物拾得、埋蔵物発見、相続、物の自然的発生、自然的消滅など

2.物権変動における「意思主義」と「形式主義」

物権変動の効果(所有権移転や抵当権設定などの効果)が発生するためには、意思表示の合致だけで足りるのか(意思主義)、さらに公示方法(詳しくは次回の「権利の窓」で説明)まで要求されるのか(形式主義)、ということが問題になります。

これも少し簡単に言いかえると、
「物権変動には、『売った』『買った』と言うようなお互いの意思表示だけでいいのか、それとも登記申請や、引渡し、代金支払いなどの形式的な事も必要か?」
という意味合いです。
我が国は民法で、
第176条<物権変動の意思主義>
「物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生ずる」
と定めて、意思主義を採用しています。

3.物権変動の時期

判例は、基本的には、法律行為(契約が典型例)の時に直ちに物権変動が生じる、としています。
しかし、この原則が変えられないものだとすると、
現実の取引社会にとっては、とても不便なことでしょう。

例えば、売買契約時に必ず所有権が移転してしまうとしたら・・・。

・家を買ったのにローンがおりなかった。 

→買主の債務不履行問題、売主の所有権の回復の問題などが発生

となり怖くて売買契約どころではなくなってしまいますね。とはいっても売買契約もしていないのにローンを申し込むことも難しいでしょうし・・。

すると、家やマンションといった住居を購入する個人以上に、例えば収益不動産の購入や売却を目的としている不動産業者さんへの影響が大きなものになる事は想像に難くないでしょう。
なにせ、取引形態は売買即決済!しか有り得ないことになるのですから。

したがいまして、当事者間の「特約」によって所有権移転時期を、登記や引き渡し、代金支払時などと同時にする事が認められています。

以上、物権変動について書かせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?少しでも「なるほど」と思っていただけれは幸いです。

(作成者 勝 精輝)