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権利の窓

2007年12月20日 民法入門38 「他人の権利が自分のものになるなんて」

取得時効  ―民法入門38―
「えっ、他人の権利が自分のものになるなんて・・」

時効とは、ある事実状態が一定期間継続することによってその事実状態を尊重しましょうという制度をいいます。

時効には、一定期間の継続により権利の取得を認める取得時効と、逆に権利の消滅を認める消滅時効の2種類があります。

今回はそのうちの、他人の権利を取得する事ができる取得時効についてお話したいと思います。

えっ、他人の権利が自分のものになるなんて…。とお思いのみなさん、民法にはそのような規定があるのです。

例えば、ある土地が他人のものだと全く知らず、しかも知らないことについてやむを得ないような場合、10年間その土地に住み続けることにより自分の土地とすることができてしまうのです。 

さらに言えば、たとえその土地が他人の土地だと最初から知っていても20年間住み続けることによってその土地を自分のものにすることができるのです。

この取得時効ですが、上記のようなことを主張するには一定の条件のようなもの(要件といいます。)があります。

そのひとつに「所有の意思をもってすること」というものがあります。 

「所有の意思をもって」とは、簡単に言えば「これは私のものだ!」と思って所有することです。

これは非常に重要な要件で、例えば土地を借りている人は何年他人の土地に住み続けてもその土地を時効によって取得することはできません。

なぜなら、土地を借りている人は大家さんから土地を借りて住んでいるということを分かったうえで契約を結んでいるからです。

一方、不法に他人の土地を占拠する人でも「これは今日から俺のものだ!」と思って人のものを占拠し続けると時効によって自分のものになるのです。

不法占拠者は人のものだと最初からわかったうえでものを取得し、その時点から「これは俺のものにする!」と思っているからです。

ただし、強盗のように他人のものを奪い去ったり、拾ったものを隠し持っていたりしてもそれによって時効が成立することはありません。なぜならば、取得時効成立のためには「平穏かつ公然に」という要件をも満たしている必要あるからです。そんなことが認められれば世の中メチャクチャですもんねぇ。

ということで、最後に判例もある具体的な例をひとつご紹介致します。

Aの父親は家を借りて住んでいましたが、父親の死亡後、唯一の相続人のAはその家を父親の持ち家だと信じていました。
そのため、Aは父親の家を相続したと何の疑いも無く思いました。
しかし、突然大家さんが現れて、「お父さんが亡くなって気の毒だが、家の賃貸借契約をやめたいからもう家を出て行ってくれないかねぇ。」と言ってきたのです。

果たしてAさんを法律は助けてくれるんでしょうか。

本来なら、Aさんは、父親の「私は大家さんから家を借りてるんだ。」という意思をそのまま受け継ぐはずですが、相続をした時点で「これからはこの家は俺のものなんだな。」と思っているため、「所有の意思」に転換したと認められ、時効取得できる可能性が出てくることになります。

以上、お話した内容に少しでも興味を持っていただいてちょっと調べてみようかな?なんて思っていただけると幸いです。

(作成者 梶原 亮)