権利の窓
2006年05月16日 民法入門14 「法律行為って??」
法律行為 意義 要件 効果 ―民法入門14―
「法律行為って??」
こんにちは!
今回は、法律行為についてのお話しです。
“法律”と頭にくっつくだけで何だか厳格なイメージになりますが、堅苦しく考えないで下さいね。分かりやすく具体的な場面を想像しながら理解して下さい。
ではスタート!!
皆さんの身近でよく行われている法律行為である売買契約を例に挙げてみましょう。
例えば、太郎さんが花子さんに車を売るという売買契約が二人の間で締結されたとします。特段の事情がなければ、この売買契約の締結によって花子さんは車の引渡請求権を取得し、また車の代金の支払い義務が発生します。逆に太郎さんは代金債権を取得し、車の引渡し義務を負うことになります。そして本例において、もし花子さんの一方的な都合で代金を支払わなかった場合、太郎さんは裁判所を通じて支払いを強制することもできます。このように、それを行うことによって法的に行使できる「権利」や「義務」を発生させたり(消滅させたり)する行為を法律行為といいます。
ちょっと頭を切り換えて今度はこんな場面を想像してみて下さい。今度は法律行為ではない行為の例です。
あなたが憧れの彼女とデートの約束をしたとしましょう。約束の日、ワクワクしながら待ち合わせ場所に行ったのですが彼女は一向に現れません。電話をしても繋がらない。そう、あなたは彼女にデートをすっぽかされたのです。悲しいやら、腹立たしいといった心境になるでしょう。けれども約束を守らなかった彼女に対して再度デートを強制することは出来ませんし、ましてや裁判所に訴える事も出来ません。もし訴えでもしたらあなたが頭のおかしい人なんて言われかねません。このような約束には契約というほどの強い拘束力がなく、当事者の間に何ら法的に行使できる権利や義務は発生しないからなのです。
最初の例と比較してみて下さい。法律行為により、様々な権利や義務という効果が発生するのに対しそうでない上記のようなデートの約束といった行為の場合には何ら権利や義務は発生しません。
次に法律行為の要件と効果について考えてみましょう。
例えばA子さんが仕事帰りに、近所で有名な頑固おやじが経営する果物屋さんに寄ったとします。(最近あんまりありませんが・・)おいしそうな梨を見つけたので「おじさん!梨を一つ下さい」と言うと。頑固おやじは「今日はもう売り切れ!」とぼさっと呟き、呆然とするA子さんをよそに片付けを終わらせ店の奥に入ってしまいました。結局A子さんは梨を買うことが出来ませんでした。トホホ・・
私がお話ししたいのは頑固親父の話ではなく、例のように買います!という一方の意思表示があっても、他方が売りますよ!と合意して、代金を支払う合意がなければ売買は成立しないのです。現実的には今の例でわかっていただけたと思いますが、①財産移転の約束と②代金支払いの約束、この二つが民法555条にある「売買」の成立(効力発生)の要件なのです。
要件と効果を先の例に当てはめてみると売買契約の締結が「法律要件」であり代金支払い義務の発生が「法律効果」ということになります。
つまり法律行為には様々な要件があり、その要件を満たして初めて成立するのです。そして要件を満たした法律行為によって権利や義務の発生といった効果が当然に生ずるのです。(ここに言う効果とは一般的に言うプラスの意味ではなく、単なる結果と捉えてもらえば分かりやすいと思います。)
簡単に説明しましたが、これって結構怖いと思いませんか?何気なく行っている売買一つとってみても義務を負うんですよ。まぁあんまりビビる必要もありませんが!頭の片隅に置いといて貰えれば幸いです。
近年、悪質な事件が多発していますが、うっかり騙されて契約なんてしないで下さいね。知らない間にとんでもない義務を負わされている、なんて事になりかねませんから!ご注意を・・
(作成者 松浦 瑞江)